鋼板溶接・接着部の非破壊検査 Defect detection example of the weld using the infrared camera

株式会社 ケン・オートメーション 矢尾板達也、高尾邦彦 / edevis GmbH Alexander Dillenz Ken Automation, Inc. Tatsuya Yaoita , Kunihiko Takao / edevis GmbH Alexander Dillenz

Key Words: Inspection, Welding, Infrared camera, pulse thermography, non-destructive testing, (D4)

With light weighting and the price reduction of the automobile, various materials are used as well as steel materials. Therefore, it is diversified welding, the adhesion and the mechanical joining particularly it is with problem reliability and the durability of the joining between difference materials each other. We let you apply external excitation (light, ultrasonic mechanical vibration, eddy current, electric current, the heat elasticity mechanical) to an inspection object here and produce a temperature change and speak the technique that nondestructive inspects the defect in the inspection object, crack, a joining state, inside delamination, density unevenness, a painting coating thickness with an infrared camera.

まえがき

自動車の軽量化や低価格化に伴い、鋼材だけでなく様々な材料が用いられている。このため溶接、接着および機械的な接合が多様化されており、特に異材間同士の接合の信頼性と耐久性が問題となっている。ここでは、検査対象物に外的な励起(光、超音波、渦電流、電流、熱弾性、等)を印加させて温度変化を発生させ、赤外線カメラを使用して検査対象物内部にある欠陥、き裂、接合状態、内部剥離、密度バラツキ、塗装膜厚等を非破壊監査する手法を述べる。

赤外線カメラ

非破壊検査で使用される赤外線カメラは高感度で瞬間的な過渡現象を捉えるためには更に高い時間分解能を有する高速フレーム・レートが必要とされる。一画素あたりの空間分解能は、赤外線カメラと使用するレンズによって決まる空間分解能視野角によって規定されるので、大きな測定対象物や微細領域を検査する際には高画素の赤外線カメラが使用される。

光励起非破壊検査

光励起非破壊検査装置の概要を図1に示し、この手法には図2に示すパルス・サーモグラフィと、図3に示すロックイン・サーモグラフィの2種類がある。パルス・サーモグラフィでは検査対象物に瞬間的なランプ等の光励起により温度上昇をさせて、温度が下がっていく過程で健全部と欠陥箇所で発生する温度変化量および時間的な位相遅れを画像可する手法である。この手法は表面近傍の欠陥や熱伝導係数の高い金属等の瞬間的な過渡現象を捉える検査に向いている。

ロックイン・サーモグラフィでは繰り返し点灯されるランプ等によって検査対象物を励起し、健全部と欠陥箇所で発生する温度変化量および時間的な位相遅れを画像可する手法である。

Fig.1 Principal of optical enhancement method
Fig.1 Principal of optical enhancement method
Fig.2 Principals of pulse thermography
Fig.2 Principals of pulse thermography
Fig.3 Principals of lock-in thermography
Fig.3 Principals of lock-in thermography

光励起非破壊検査の検査事例

図5にパルス・サーモグラフィの検査事例として乾電池底部の溶接部状態を示す。金属等の熱伝導係数の高い材料でも瞬間的な温度変化の過渡現象を捉えることで健全部と欠陥部を明確に判別している。図6に携帯電話用リチウムイオン電池の時系列画像を示す。左側の画像は光励起から短い時間で検査対象物表面に近い内部画像を、右側にいくに従って長い時間の深いところの内部画像を示しており、熱伝導の違いによる時間差から内部構造を断層画像化することができる。

Fig.4 Welding inspection by pulse thermography
Fig.4 Welding inspection by pulse thermography
Fig.5 Time domain inspection by pulse thermography
Fig.5 Time domain inspection by pulse thermography

図6に光励起ロックイン・サーモグラフィを使用して、複合材自動車ボディの欠陥検査画像を示す。図7に深さ方向に欠陥位置の異なる複合材の平板の検査事例を示す。光励起させるロックイン周波数を変えて0.5Hzの高い周波数では検査対象物表面近傍だけしか温度変化が発生せず、検査つぃしょう物の表面に近い欠陥だけが検出される。一方0.06Hzの低い周波数では検査対象物の深いところの欠陥も検出されている。このように光励起ロックイン・サーモグラフィでは、励起させる周波数を変化させることで、検査対象物表面から欠陥までの熱伝播する温度変化や位相の遅れを検査することで欠陥の深さを推量することができる。

Fig.6 Composite inspection by lock-in thermography
Fig.6 Composite inspection by lock-in thermography
Fig.7 Correlation of defect and lock-in frequency
Fig.7 Correlation of defect and lock-in frequency

超音波励起非破壊検査の検査事例

図8に超音波励起非破壊検査装置の概要を示す。検査対象物は超音波振動子により励起され、検査対象物内部にあるき裂やクラックによる内部摩擦およびヒステリシスの発熱が検査対象物表面に伝播してくる状態を赤外線カメラで画像化する。図9に超音波励起により検査されたリベット留めの画像を示す。リベットが一体化して溶け込んだ状態の左側の良品では超音波励起しても発熱しないが、リベット留めに隙間が生じている右側の状態では内部摩擦による発熱現象が検出される。

Fig.8 Principal of ultra-sonic enhancement method
Fig.8 Principal of ultra-sonic enhancement method
Fig.9 Evaluation of the rivet by ultrasonic excitation
Fig.9 Evaluation of the rivet by ultrasonic excitation

その他の励起手法による検査事例

その他、検査対象物を励起する手法としては、機械的負荷や渦電流等があり、ここでは誘導コイルを使用して誘導加熱よる検査画像を図10に示す。左側の赤外線サーモグラフィの画像では検査対象物の表面の溶接の材料の違いや放射率の違いにより、溶接部の内部欠陥の有無を評価することはできないが、位相画像では検査対象物の表面状態に影響を受けにくい検査が可能になっている。このように、実際の自動車部品等のインライン検査では、放射率を均一化させるための黒色塗装を検査対象物表面に施すことができないので、表面の放射率や形状の影響を受けにくい位相情報による検査が行われる。

Fig.10 Evaluation of the welding parts by eddy-current excitation
Fig.10 Evaluation of the welding parts by eddy-current excitation

鋼板のレーザービーム溶接と接着剤充填の検査事例

自動車の接合として多く使用されている鋼板のレーザー溶接と、接着剤の充填状態を模擬した試験レベルの評価結果を 示す。

製造ラインにおけるレーザービーム溶接では、図 11に示されるような、さまざま欠陥や不良が発生することがある。

○ブローホール・ピンホール

○溶接割れ

○溶け込み不良

○融合不良

○アンダーカット・オーバーラップ

図 12 の形状寸法で厚さ 0.75 ㎜の 2 枚の鋼板を重ねた状態でレーザー出力を変えながら 6 種類の溶接状態を模擬した試験片を評価した画像を図 13 に示す。

Fig.11 Various welding defects
Fig.11 Various welding defects
Fig.12 Dimension of laser beam welding specimen
Fig.12 Dimension of laser beam welding specimen
Fig.13 Various welding defects by thermography
Fig.13 Various welding defects by thermography

図14の形状寸法で厚さ0.8㎜の鋼板を2枚重ねて接着した状態を示す。図15では接着剤の幅を0.3㎜として、間に未接着の箇所として5㎜、10㎜および20㎜長さの空隙を置き、この状態で接着剤の充填状態が評価可能かどうか検査した。図16では接着剤の幅を0.15㎜から0.5㎜と変化させた時に、接着剤の幅の違いが評価可能か検査した。

Fig.14 Dimension of bonding specimen (steel)
Fig.14 Dimension of bonding specimen (steel)
Fig.15 Filling state of the adhesive by thermography
Fig.15 Filling state of the adhesive by thermography
Fig.16 Difference in width of the adhesive by thermography
Fig.16 Difference in width of the adhesive by thermography

図 17 の形状寸法で厚さ 0.8 ㎜の鋼板と厚さ 4.9 ㎜のガラス板を 5 ㎜の幅で重ねた状態で、図 18 に接着剤の充填状態を評価した結果を示す。

Fig.17 Dimension of bonding specimen (steel and glass)
Fig.17 Dimension of bonding specimen (steel and glass)
Fig.18 Various bonding defects by thermography
Fig.18 Various bonding defects by thermography

まとめ

検査対象物に光励起や超音波励起を掛けることで検査対象物内部の欠陥や剥離状態を画像的に評価できる。高性能な赤外線カメラは非常に小さな温度変化を捉えることができ、更にロックイン・サーモグラフィと組み合わせることで、S/Nの改善が図られている。時系列処理や励起周波数を変化させることで、従来難しかった検査対象物内部の深さ方向の情報を可視化できるようになっている。また、画像処理により、健全部と欠陥部を二値化することで自動判別が可能な検査装置としても適応できる。

参考文献

  1. T. Zweschper, A. Dillenz, G. Riegert, D. Scherling, G. Busse : Ultrasonic excited thermography using frequency modulated elastic waves, Insight (2003)
  2. C. Srajbr, K. Dilger : Non-destructive evaluation of Car body structure by induction-excited thermography, Infra R&D ? 7th International Infrared Conference (2012)
  3. 矢尾板達也, P. Bremond : 赤外線応力測定のリアルタイ ム計測法, 非波形検査, Vol.59, No.7 Jul., p.324-327 (2010)
  4. 矢ヶ﨑文男, 矢尾板達也, A. Dillenz : 赤外線サーモ グラフィによる非破壊検査, 安全・安心な社会を築く先進材 料・非破壊計測技術シンポジウム論文集, 日本非破壊検査協 会, p.55-60 (2011)
  5. 矢尾板達也, A. Dillenz : 光励起および超音波励起によ る非破壊検査の測定事例, 第 6 回赤外線サーモグラフィ部門 ミニシンポジウム, 日本非破壊検査協会, p.13-16 (2011)