高速赤外線カメラを使用した破壊現象の観察 Observation of the destruction phenomenon using the high-speed infrared camera
株式会社 ケン・オートメーション 矢尾板達也 / FLIR ATS Pierre Bremond Ken Automation, Inc. Tatsuya Yaoita / FLIR ATS Pierre Bremond
キーワード:高速赤外線カメラ,赤外線サーモグラフィ,破壊現象
Keywords: High-speed infrared camera, Infrared thermography, Destruction phenomenon
The observation of the destruction phenomenon can be measured by the high-speed infrared camera and PC. The identification of the destruction starting point is effective using the infrared camera. Here, I introduce the application with the observation example of the destruction phenomenon using the latest and the high-speed infrared camera. At the same time, I introduce it about the infrared stress measurement and the example of Non Destructive Inspection by the infrared thermography.
はじめに
赤外線カメラとパソコンの性能向上に伴い、赤外線カメラを使用した破壊現象の観察が進歩して いる。特に破壊の起点、破壊箇所の特定やき裂先端では、発熱を伴う現象であるために、赤外線カ メラによる観察は非常に有効である。ここでは、最新の赤外線カメラを使用した、破壊現象の観察 事例や、高速赤外線カメラによるアプリケーションを紹介する。併せて、赤外線カメラを使用した 赤外線応力測定、赤外線サーモグラフィによる非破壊検査の事例に関しても紹介する。
実験方法
赤外線カメラには大きく分けて冷却型と非冷却型の2種類があり、高速撮影では取り込み時間が 短く温度分解能が高い冷却型赤外線カメラが使用される。赤外線カメラは320X256画素、640X512画素から 1240X1024画素へと高画素化が進んでいるが、画像転データ送速度との関係で、高速撮影では画素数の制約を考慮しなければならない。また、カメラのデジタル処理化や画像取り込み手法により640X512画素で 300Hz、320X256画素で1000Hz程度(温度帯域による)の高速撮影が可能になっている。
エアーバッグの展開試験
Fig.1とFig.2に160X120画素で990Hzの撮影条件で行ったエアバックを横から撮影した展開状態を示す。展開時には最高で900℃に達するガスが流出していることが分かる。ガスが噴出する時間は非常に短く高速撮影が必要とされる。赤外線カメラでは破壊の起点が最初に温度が高くなり、どの部位からエアーバッグが展開するかモニタリングする上で、赤外線カメラによる撮影は非常有効な手法となっている。
ホプキンソンバーの衝撃試験
Fig.3とFig.4にホプキンソンバーを64X8画素で20000Hzのフレームレートで撮影した結果を示す。赤外線カメラの画素数を少なくしたことにより20000Hzのフレームレートで、ホプキンソンバーに掛かった衝撃の伝播に伴う温度の伝播する状態がモニタリングされる。圧縮荷重により温度上昇と、暫らくした後に引張荷重による温度下降が発生し、温度の伝播する状態がFig.4のタイミンググラフに示さるように、時間の経過と共に衝撃によるピークの温度変化が伝搬していくことが観察される。
赤外線カメラは、通常の高速カメラでは分からない発熱現象をモニタリングすることができ、過渡現象の評価に有効である。
回転するタイヤ
走行中にタイヤに路面に接地する際に掛かる荷重を測定する手法がなく、ここでは赤外線カメラを使用してタイヤ表面に発生する温度変化を測定している(Fig.5,Fig.6)。この画像はタイヤのテストベンチ上で、150km/hの速度で回転している。ここで使用している赤外線カメラは非常に短い取り込み時間で撮影しており、高速で回転しているタイヤの表面状態でも画像が流れることなく撮影できている。この結果、タイヤの設置面を直接観察できなくともタイヤの表面温度をモニタリングすることで、タイヤトレッドの温度差違いが路面に接地荷重の違いを示してるの違いを示してるの違いを示してるの違いを示してる。
プラズマ溶射ノズル
Fig.7にプラズマ溶射から射出されるプラズマ粒子の赤外線画像を示す。高温で流出されるプラズマ粒子は流速や温度がプラズマ照射後の性能に大きく影響を及ぼすので、最適な射出条件を決定する上で、赤外線画像が効果的に使用された。ここ撮影では、プラズマ粒子の流速が60~100m/秒と速いので、非常に短い取り込み時間が求められた。
大理石の圧縮破壊試験
Fig.6とFig.7に大理石試験片の圧縮波形試験の赤外線画像を示す。
地中深くで発生する地震発生時における地殻の滑り現象では、2000℃に達すると云われ巨大なエネルギによる破壊現象が発生しているが、岩石の破壊におけるメカニズムは複雑であり、検証が求められている。
また、リニア中央新幹線の計画があり、今後日本では多くのトンネル工事が計画されている、一方、日本には多くの活断層があり、トンネル掘削時に発「山跳ね」と云われる破壊現象が発生し易く、トンネル掘削時の岩石の破壊現象の確立や、長寿命で低摩耗のシールド掘削機用のビットの開発が求められている。
大理石の圧縮破壊試験では、どのようなメカニズムで破壊現象が発生して、破壊時に発生しているか温度変化を測定した。測定は 160X128 画素の画素数で、500Hz のフレームレートで行っている。
赤外線応力測定
従来の赤外線応力測定法では、疲労耐久試験機上に取り付けられた測定対象物をサイン波形入力の荷重による温度変化によって応力測定が行われている。
新たな要求として、衝突試験や衝撃荷重による応力測定のニーズがあり、ここではFig.8に示すように自動車のドアを閉めた際にドアの鋼板に掛かる応力測定を行った。Fig.9に示すような赤外線の連続フィルム画を撮影して、その後この画像に周波数解析を行い、Fig.10に示すようなに示すような周波数毎に発生する応力の評価が可能となっている。
赤外線サーモグラフィによる非破壊検査
Fig.11に塗装膜下の腐食の進展状態を示す。パルスサーモグラフィによる熱励起塗で測定対象物の温度を上昇させ、熱の伝播時間を評価すことで塗装膜下の腐食状態を可視化している。塗装膜は数十Μmと薄いので、高速フレームレートによる時間分解能が必要とされる。ここでは下段に赤外線顕微鏡レンズを使用した腐食部のマクロ観察画像を併せて示している。
まとめ
赤外線カメラの高性能化とPCの性能向上により、赤外線画像の高速撮影が可能なっている。この結果、可視画像では特定が難しい破壊の起点、破壊箇所の特定やき裂の進展の評価に有効である。ここでは、多くの観察事例を紹介したが、今後も赤外線カメラの進歩に伴い更なる現象の評価が期待される。破壊現象の観察には赤外線顕微鏡レンズによるマクロ観察が有効で、30cm離れた距離から観察可能なマクロレンズをラインナップしている。